2014年4月号【編集後記】

★「平安楽土」を連載中だった作家の山本兼一さんが二月十三日にお亡くなりになりました。昨年秋にいただいた葉書には、「若き青年官僚を主人公として、国家とは何かという大問題に愚直に迫ってみるつもりです」とありました。

少しばかり資料収集をお手伝いした御縁もあり、私自身、毎月の原稿をとても楽しみにしていました。絶筆となった今月号の第六回は、亡くなる直前まで、酸素マスクをつけながら執筆されたと聞きます。山本さん、この先、どのような物語を展開させようとお考えだったのですか。心よりご冥福をお祈りいたします。★生殖医療はどこまで許されるか。倫理、法、生まれてくる子どもの福祉など、多面的な見方が必要です。技術の進歩といかに向き合うべきか、考えてみました。(木佐貫)

★九〇年代初め、入社したての僕は不思議に思っていた。「なんでウチの会社はこんな地味な学者の著作集を出しているのだ?」。地味な、と思ったのが井筒俊彦であり、森銑三だった。ベクトルは違えど、不世出の巨人たち。無知とは恐ろしきものかな。比べるのも烏滸がましいが、同じ頃、哲学やイスラーム学を志し、井筒を読む有望な青年たちがいたのである。今回、あらためて驚いたのは井筒の文章が実に平易であること。書いてあるのは難しいことだったりするが、難しく書いてあるわけではない。叡知の扉は開かれている。あとは敲くだけ。(吉田)