2014年5月号【編集長から】

★圧倒的な力を背景に、他国領内の一部地域を占領、併合。支持率が八〇%を超え、"帝国主義的"振る舞いを続けるプーチン大統領の首に誰も鈴をつけられないのが国際社会の現状です。

ロシア同様、強権政治で国内外を睥睨する中国はこの状況をどう見ているか。特集では共産党一党独裁体制の行く末に焦点を当てました。

★今月号が編集長をつとめる最後の号となりました。いま改めて思うのは、およそ百三十年にわたり受け継がれてきたのは「中央公論」という看板だけではない、ということです。論壇誌としての自負をもちつつも、常に新しい知見を求め、変化を厭わない編集姿勢、とでも言えばいいでしょうか。自らの正しさを居丈高に訴えるだけでは人の心を動かすことはできません。ストレートな主張だけでなく、あえて異なる意見を載せたり、専門分野が違う人の見立てを聞いたりする。そんな複眼思考こそが雑誌の真骨頂であり、存在意義でもあります。中央公論社での"修業時代"にそれを学びました。

★校了中にページ不足が発覚したかと思えば、発売直後に抗議や批判を受ける――。数々のトラブルを乗り越えられたのは、チームとして仕事をしていたからこそ。三年間仲間に恵まれ、後ろ髪ひかれる思いもなくはないですが、異動は宮仕えの常です。★最後になりましたが、本誌を支えてくださる読者の皆様に感謝申し上げます。ありがとうございました。

中央公論編集長 木佐貫治彦