2015年4月号【編集長から】

 こんにちは、中央公論編集長の安部順一です。

 フランスの経済学者、トマ・ピケティの「21世紀の資本」が、米国に続いて日本でも大きな反響を呼んでいます。「アベノミクスは格差拡大をもたらす」。国会でも野党が声高に批判を繰り返します。しかし、ピケティの指摘は、本当にそのまま日本にも当てはまるのでしょうか。今月号の特集「ピケティの罠〜日本で米国流格差を論じる愚」は、そんな疑問からスタートしました。

来日したピケティは、日本の所得上位10%の得た収入が国民所得に占めるシェアが40%近くまで上昇していることを指摘し、日本の格差拡大に警鐘を鳴らしました。それでは、日本の所得上位10%って、どれくらいの年収なのでしょうか。ピケティのデータ収集を日本で唯一手伝った森口千晶さんが、大竹文雄さんとの対談で明かしてくれました。答えは「年収580万円以上」。「そんなに低いの?」と驚いた方も多いのではないでしょうか。ちなみに、米国の上位10%は「年収1335万円以上」(1ドル=119円換算)。こうした実態をどうみるのか。猪木武徳、竹森俊平、原田泰らの各氏が様々な視点を示し、最後にピケティが「みなさんの疑問に答えましょう」で解説します。ビジネスマン必読です。

さて、年初から世界を揺るがす「イスラム国」。そして、20年前に日本を震撼させた地下鉄サリン事件。ともに、「国家」を名乗ったテロ集団ですが、「『イスラム国』拡散するテロ」(池内恵×中山俊宏×細谷雄一、宮家邦彦×高岡豊)と、特集「オウムと漂流する若者〜地下鉄サリン事件から20年」(森達也×武田徹、田原総一朗×古市憲寿、宮台真司)では、これらの相似も含めて、「イスラム国」とオウムの本質に迫っています。

 最後にちょっとしたクイズを。村松友視さんと唯川恵さんの対談「"和"の嗜みが生き続ける金沢の不思議」。金沢で蒲焼きというと、何を食べるでしょう? 答えは本誌で。一部のネット書店でも購入できます。