2015年6月号【編集長から】

 こんにちは、中央公論編集長の安部順一です。

 書店を覗くと、ピケティの「21世紀の資本」ブームは早くも冷めた感がありますが、どっこい「格差本」は今も人気のようです。ただ、格差の要因を金銭面ばかりに求めた本も少なくありません。

特集「教育格差の正体」では、子どもたちの学力格差など教育格差がなぜ生じているのか、尾木直樹さんらの専門家に多角的に分析してもらいました。お茶の水女子大学の耳塚寛明教授、大阪大学の吉川徹教授らの分析で浮かび上がるのは、確かに親の所得は重要な要因ではあるものの、親の子どもの教育に対する熱意、社会の子どもへのかかわり方も極めて重要であることです。では、格差を縮めるには、どうすればいいのか。本誌を手に考えていただければ幸いです。

 今月号から、珍しい方のエッセイを3回にわたって掲載させていただくことになりました。日本銀行の黒田東彦総裁の「素顔のエコノミストたち」です。ローレンス・サマーズやジョセフ・スティグリッツ、ジェフリー・サックスなど、ノーベル経済学賞受賞者も含めたエコノミストたちとの交遊録からは、黒田総裁の経済哲学が読み取れるかもしれません。

 さて、ロシアで5月9日に開催される「対ドイツ戦勝70年」記念式典に、中国の習近平主席が出席するなど、中露の急接近が目立っています。特集「中露急接近で何が起きるか」では、フランシス・フクヤマ、中西寛、兵頭慎治、横手慎二、久保文明、川島真の各氏が、その企図と真意を読み解きます。

 最後にちょっとしたクイズを。泉麻人さんと山田五郎さんの対談「アラカン世代、バブルへGO!」。1970年代に思春期を送った人には懐かしい話が満載ですが、山田さんがパチンコの景品ですべてそろえたものとは何でしょう? 答えは本誌で。一部のネット書店でも購入できます。