2016年1月号【編集長から】

こんにちは、中央公論編集長の安部順一です。

 パリ同時多発テロは、無差別の大量殺人を狙った点で、2015年1月の風刺週刊紙『シャルリー・エブド』本社襲撃事件に比べても衝撃的でした。その後も、組織的ではないものの、世界各地でテロとみられる事件が起きています。緊急特集「パリ同時多発テロの真相」では、山内昌之さんと佐藤優さんの対談に加え、パリ政治学院教授のジャンピエール・フィリユさん、中東調査会上席研究員の高岡豊さんの中東専門家が、背景を徹底分析します。
 株価の割に、景気回復の実感がない。そう思っている人も多いと思います。人々の期待に働き掛けるアベノミクスは、期待が萎めば失速しかねず、まさに正念場。「新・3本の矢」登場の背景には、そんな政府の危機感があります。特集「崖っぷちのアベノミクス」では、甘利明・経済再生担当大臣、小林喜光・経済同友会代表幹事、The Wall Street Journal東京支局長らが、景気回復を本物にするにはどうすべきか論じます。

 弊社は2016年、創業130周年を迎えます。その歴史の中でも、100年前の大正5(1916)年1月は大きな節目でした。大正デモクラシーの理論的支柱となる吉野作造が「民本主義」(democracy)を説いた論文「憲政の本義を説いてその有終の美を済すの途を論ず」が『中央公論』1月号に掲載され、女性の社会参加を促そうと『婦人公論』が創刊されたからです。
 今月号には、その論文を全文復刻して計102ページの「特別付録」として付け、本誌で苅部直さんに解題をお願いしました。2016年夏の参院選から、選挙権年齢が「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げられ、70年ぶりに選挙権が拡大されます。わが国では今や、投票率の低迷が課題ですが、民主主義を支えるそれぞれの「1票」の重みを考えていただくきっかけになれば幸いです。

 最後にちょっとしたクイズを。特集「2016年、これが流行る!」。『dancyu』編集長の江部拓弥さんが「新店ラッシュの中、2016年の注目」として挙げたのは、どんな店でしょう? 答えは本誌で。一部のネット書店でも購入できます。