2016年2月号【編集長から】
あけましておめでとうございます。中央公論編集長の安部順一です。おかげさまで、本誌は今年、創刊130年目(第130巻)を迎えました。明治20(1887)年以来の永きにわたり雑誌を出し続けることができたのも、読者の皆さまのお支えがあればこそで、心より御礼申し上げます。
記念すべき年の2月号では、2つのスクープをお届けします。
1つは、馳浩・文部科学大臣のインタビューで、大学改革について「国公私立大学の枠を越えた統廃合も視野」と述べ、少子化の中で、国立大学と私立大学の統合ができるような環境整備を進めていくことを明らかにしています。
もう1つは、1月7日の読売新聞朝刊でも紹介されましたが、大正デモクラシーを代表する政治学者の吉野作造が東京帝国大学で行った政治史の講義ノートが見つかったという話です。経済学者で後に東京大学総長となった矢内原忠雄らが筆記したノートで、五百旗頭薫、伏見岳人、宇野重規の3氏による座談会「見えてきた新しい吉野作造」で、その今日的意味合いを探りました。
特集は「国立大学文系不要論を斬る」。猪木武徳、竹内洋、佐和隆光ら各氏が論考を寄せていますが、目玉は、34ページを割いて掲載した「55国立大学学長アンケート」。雑誌をめぐる環境は大変厳しいものがありますが、今年は新聞やテレビ、ネットでは真似のできない「雑誌ならでは」の誌面作りを徹底追求していこうと考えており、その第1弾です。速報性の高い他のメディアに比べ、月刊誌はじっくりと読み、考えていただくメディアです。雑誌の機動力や豊富なページ数を生かし、そのための情報を手厚く発信していきます。
最後にちょっとしたクイズを。NHK連続テレビ小説「あさが来た」のモデルとなった広岡浅子は、京都の三井一族の家に生まれ、大阪で両替商「加島屋」を営む広岡家に嫁ぎましたが、文政8(1825)年の大阪長者番付だと、加島屋はどのくらいの豪商だったでしょう? 答えは、今月号の特集「今こそ明治の実業家に学ぶ」の「豪商・財閥のお屋敷を訪ねて」(竹内正浩)で。一部のネット書店でも購入できます。