2016年5月号【編集長から】
こんにちは。中央公論編集長の安部順一です。
新年度が始まりました。旅立ちの季節でもあります。大学や社会に、異動や転居で、それぞれ新たな一歩を踏み出した方もいらっしゃることでしょう。今月号は、そんな節目に読んでいただきたい2つの特集をお届けします。1つは「ニッポンの実力」、もう1つは「永久保存版・佐藤優が選ぶ知的ビジネスパーソンのための中公新書・文庫113冊」です。
バブル崩壊とその後のデフレによる「失われた20年」で、私たちはすっかり自身を喪失し、悲観論者になってしまったように思います。例えば、アベノミクス。当初の物価上昇率目標を達成できていないのは確かですが、2016年春闘では多くの企業で3年連続のベースアップ(ベア)が決まりました。それまでの10数年、一切ベアが行われなかった企業が多いことを考えれば、大きな成果であるはずですが、多くのメディアは「ベア、前年実績下回る」と伝え、悲観論を増幅します。「ニッポンの実力」は、そんなに日本は酷い状況なのかと、冷静に見つめ直すのが狙いです。国際競争力27位、民主主義指標23位などと厳しい評価も並びますが、一方で新国富指標は2位です。重要なのは、それらの指標から何をなすべきかを考え、四半期ベースの短期的思考にとらわれずに、「日本的経営」の長期的視野で道を切り拓いていくことではないでしょうか。
「113冊」は、佐藤優さんの全面的な協力で実現しました。この場を借りて、改めて厚く御礼申し上げます。タイトルこそ「中公新書・文庫」ですが、もちろん各社の書籍も紹介されています。「書店には溢れるほど新刊本が並び、ますます玉石混淆の傾向に拍車がかかる。しかし今回選んだ本は、どれも読むことに意味のある本ばかりだ。『カネを返せ!』と言われるような本は1冊もないことを保証する」と佐藤さんが言い切る本を、新たな生活を始めるにあたって、1冊でも2冊でも手にとっていただければ幸いです。
最後にちょっとしたクイズを。連載「グループサウンズ革命」。タイガースの楽曲を多く手掛けたすぎやまこういちさんが自ら最高傑作というのは、どの曲でしょう。答えは、本誌で。一部のネット書店でも購入できます。