2016年7月号【編集長から】

 こんにちは。中央公論編集長の安部順一です。

 参院選が7月10日の投票日へ向け、事実上スタートしました。今回の参院選の隠れたテーマは「シルバー民主主義」ではないでしょうか。この言葉が人口に膾炙するようになったのは、ここ数年のことです。高齢者の投票率は高いのに若者は低いため、人口構成以上に高齢者の声が政策に反映されやすくなり、「年金など高齢者向け給付は手厚く、負担は少なく」になっているとされます。

 本当にそうなのか、そうだとすれば、これからの民主主義はどうあるべきなのか。若者の声をより反映させようと「18歳選挙権」が導入される参院選を前に、特集「シルバー民主主義に耐えられるか」で考えます。折しも、安倍首相は消費税増税を2019年10月まで2年半延期することを表明しました。この判断は、シルバー民主主義というよりも、景気の現状分析が大きく影響しているようですが、結果として、社会保障財源が足りなくなる可能性もあります。猪木武徳さんの「世代間対立はデモクラシーの宿命である」、28歳佐藤信さんと30歳原田謙介さんの対談「若者が投票に行かないこれだけのワケ」をはじめ、様々な角度からシルバー民主主義を分析します。関連して、五木寛之さんの特別インタビュー「『嫌老社会』の一つ先に『多死』の時代が訪れる」も必読です。

 ドラマ離れが指摘されるなか、NHK連続テレビ小説(朝ドラ)の快進撃が続いています。特集「『朝ドラ』ブームを読み解く」は、宇野常寛さんの「なぜ『朝ドラ』人気は復活したのか?」を軸に、「あさが来た」に出演した波瑠さん、近藤正臣さん、そして脚本を書いた大森美香さん、NHKドラマ番組部長の遠藤理史さんに登場いただき、「朝ドラ」ブームを体系的に考えます。

 ちょっとしたクイズを。囲碁七冠の井山裕太さんと将棋の羽生善治さんの囲碁・将棋頂上対談「七冠を背負う重圧と解放感」。一つの局面を見たときに、羽生さんはどれぐらい候補の手を考えるでしょう? 井山さんはどうでしょう? 答えは、本誌で。一部のネット書店でも購入できます。

 最後に。私事ですが、この号で編集長を離れることになりました。この2年余、「総合論壇誌だからできること」を考え、様々な切り口の企画に取り組んできましたが、『中央公論』の挑戦はまだ続きます。今後もよろしくお願いします。