2016年8月号【編集長から】
8月号は「世界を蝕むポピュリズムと排外主義」「日本人横綱は誕生するか」の2つの特集をメーンにしています。前者は英国のEU離脱とドナルド・トランプ氏の米大統領選共和党候補確定を受けたものです。
「民主主義は最悪の政治形態と言われている。これまで試みられたそれ以外のすべての政治形態を除いては」とは、ウィンストン・チャーチルの名言です。民主主義の優秀さを逆説的に強調した1947年11月の議会演説です。
それから69年後、英国民は、欧州各国が主権を譲り合って共栄するという世界史的な試み(EU)から自主退場しました。米国民は、移民排斥などの過激な主張を掲げるドナルド・トランプ氏を共和党の大統領候補に確定しました。いずれも民主主義の手続きに則った正当な国民の意思です。
世界大戦の傷がまだ生々しい時期にチャーチルがいった民主主義の「最悪」な側面とは、「ポピュリズム(大衆迎合主義)と排外主義」の暴走でしょう。民主主義のリーダーを任じてきた英米がその「震源地」となり、他国にも燎原の火のように広がっています。民主主義に批判的な、あるいは権威主義的な国の指導者たちは、含み笑いをしているかも知れません。歴史の分岐点は後からわかるものです。当分この問題から目が離せません。
日本人横綱が誕生したのは18年前の若乃花が最後です。ずいぶん時間が経ちました。国技が海外勢に席巻されるのは忍びないですね。国内勢には頑張って欲しい。ただ、相撲ファンの間に外国人排除の合唱は起きていません。それが当たり前、と思えることは、いま、とても大切な感覚だと思います。
この号から編集長をしています。齋藤孝光と申します。よろしくお願いいたします。