2017年12月号【編集長から】
<土地放棄の責任は問われなくていいのか>
律令国家の公地公民に始まり、寺社や貴族による荘園制、それを葬り去った秀吉の太閤検地など、日本史を振り返れば、時代の権力者は常に土地の支配者でもありました。近現代でも、戦後の農地改革までは地主は支配階級とみなされていましたし、農業が主要産業の座を降りた高度成長期以降も、「東京の地価でアメリカ全土が買える」と喧伝された1980年代後半の土地バブルまで、この歴史の法則が作動していたと思います。
潮目は92年に変わりました。前年に10%以上も上昇してピークをつけた公示地価の全国平均が、4・6%の下落に転じたのです。そこからさらに四半世紀、相続時に不採算と疎んじられる不動産は地方ばかりか、都市部にも増えています。後世の歴史家は「土地所有と権力の関係が途切れた初の時代」と総括するかも知れません。
土地登記が義務化されていなかったり、所有者不明土地に行政が介入できかったりするのは、土地が棄てられる時代の到来を想定していなかったからでしょう。しかし、土地は自動車や家電と違い、解体や廃棄はできません。国土荒廃のコストは社会全体が負担しなければならないのです。
公有から私有へという歴史の流れを少し巻き戻し、公的な関与を強めるしか道はなさそうです。ごみの不法投棄に罰則があるのに、土地放棄の責任が問われないのはおかしいという議論が、いずれ始まると予想しています。
編集長 斎藤孝光
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