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2018年4月号【編集長から】

<明治維新の「勢」に学びたい>

4月号の特集にご登場いただいた苅部直氏の近著『「維新革命」への道』には、「勢」というキーワードが出てきます。本居宣長や頼山陽らに支持された概念で、歴史をある方向に動かす、社会の中に潜む原動力を意味します。これには、時の権力者といえども逆らえない、と彼らは考えました。

「勢」の赴くまま、歴史は一つの方向を目指して不可逆的に進んでいくーー。知識層にこうした考えが共有されていたからこそ、明治維新の際、日本は西洋の進歩史観を違和感なく受け入れ、文明開化に突き進むことができた、というのです。日本が維新の大業を成し遂げた下地には、個々の志士たちの努力もさることながら、さらにその先人たちの、柔軟な感性があったといえるのでしょう。

今でいえば「空気」でしょうか。つい最近流行した「KY」という言葉も、元をたどれば江戸時代の国学者に行き着くのかも知れません。

一方で、日本が無謀な大戦に突入した遠景に、それぞれの時代に起きた事物の結果を「動かしがたい現実として肯定し、無責任に追随してゆく意識」があったという「いきほひ」批判が、戦後、丸山眞男によって唱えられたとも、同書に教えられました。

「勢」や「空気」が、無視も座視もできないものだとしたら、その取り扱いには慎重さが必要でしょう。維新一五〇年。日本人を考えるいい機会にしたいと思います。

              編集長 斎藤孝光

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