2018年5月号【編集長から】
<「憲法ニヒリズム」をどう乗り越えるのか>
5月号の特集タイトルは「憲法の正念場」です。昨年5月号は「憲法の将来」(電子版https://buff.ly/2Ee7Ga7)でした。この1年で改憲がにわかに政治日程にのぼり、もはや「将来ごと」ではなくなったのです。
では、なぜ「正念場」なのか。国民の関心が高く、しかも国論を二分するテーマだからでしょうか。
答えはNOです。
特集では境家史郎教授が世論調査を丹念に分析し、「憲法問題に国民は大したこだわりを持っていない」と結論づけています。一般の国民は、憲法問題に醒めている。「憲法ニヒリズム」です。
その正体も、特集の中で示されています。
複数の筆者が懸念するように、憲法を字義通りに解釈して運用すれば、日本は国際環境についていけなくなります。だから多くの国民は自衛隊の存在も日米安保も集団的自衛権の限定行使も認めている。しかし、それを解釈改憲という形で続けていれば、憲法の重みはどんどん失われます。憲法なんて現実とは関係ない、と国民が思えば、立憲主義は形骸化します。そうなればまさに正念場です。
戦後70年余り、政治の世界では、憲法の中身の議論に入る前に、「改憲」か「護憲」かという立ち位置をめぐる不毛な対立が続いてきました。こうした政治の状況に、国民はあきれ、倦んでいるのではないかと、心配しています。
そして、これも複数の論者が指摘しているように、不毛な対立を煽った責任はメディアにもあると思います。それが、2年連続で特集を組んだゆえんでもあります。
編集長 斎藤孝光
<中央公論デジタル・ダイジェスト=3月25日発刊分>
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