2018年7月号【編集長から】
<自由へのただ乗りは許されない>
7月号は、「シャープパワー」という耳慣れない言葉をあえて特集のタイトルにしました。自国に都合がいいように相手国の世論を操作する工作を意味する新しい概念です。提唱者はクリストファー・ウォーカー氏。新概念を論じた昨年末の『フォーリン・アフェアーズ』誌の論文は国際外交の専門家の間で話題となりました。特集ではそのウォーカー氏の特別寄稿が読みどころの一つです。
新パワーの使い手は中国やロシア。相手国は欧米や日本などの民主主義国家です。これは非対称な戦いです。相手国に自国の主張を浸透させようとしたり、そのことを批判されれば「不当だ」と反論したりできるのは、相手国に言論の自由があるからです。自国民の口には封をしたまま、「シャープパワー」を駆使する国は、他国の自由に「ただ乗り」し、いずれは乗り潰してしまうつもりなのでしょう。
米連邦捜査局(FBI)は議会証言で、中国政府の工作機関の一つと見なされている「孔子学院」を捜査対象にしていると認めました。米議会の動きも急です。いまは耳慣れない「シャープパワー」ですが、ほどなく人口に膾炙する予感がします。
日本もロシアや中国で対外工作を駆使した過去があります。そのことの是非はおくとして、逆の立場になった時に何が起きるか、今は想像力をたくましくする必要がありそうです。欧米に比べて、我が国は無警戒・無防備に過ぎるような気がしてなりません。特集を機に議論が深まればと思います。
編集長 斎藤孝光
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