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2018年12月号【編集長から】

<リーダーのあり方を世界史に学ぶ>
「小泉というのは一度言い出したら聞かないと言われているが、必ずしもそうじゃない」。就任1年目の小泉首相は靖国神社に参拝した後、こう語りました。終戦記念日の参拝を公約していましたが、中国などに配慮して2日前にずらしたのです。「口は一つだが、幸いにして耳を二つ持っている」と続け、周囲の助言に従ったと説明しました。

 その後も長く政治問題化したことを思えば、中途半端な妥協だったかもしれません。とはいえ、公約を翻す言い訳にしてはうまい言い方です。消費増税を延期した安倍首相の「新しい判断」、新党を結成した小池百合子氏の「アウフヘーベン」。何を守り、何を譲るのか。それを国民にどう語るか。妥協する時こそ、政治家の器量が問われます。

 今月号の特集は「名君と暴君の世界史」です。岡本隆司氏は巻頭の鼎談で「外交では譲歩が非常に大事です」と語り、本村凌二氏は「リーダーは民衆を説得しなければならない」と説きました。米中貿易戦争や北朝鮮の非核化、そして北方領土問題。各国首脳の決断の評価は歴史が下すのでしょうか。

 自身の立場に固執するだけでは意味がないのは、言論も同じです。『新潮45』の休刊騒動には、冷静に対話することの難しさを感じます。「政治は可能性のアートである」というビスマルクにならい、「妥協のアート」を磨く必要もありそうです。

 編集長 穴井雄治