2019年2月号【編集長から】
<平成の先へ 日本の歴史を考える>
<去年今年貫く棒の如きもの>。高浜虚子がこう詠んだのは、昭和25年12月20日のことです。当時76歳。敗戦から5年後の慌ただしい年の瀬、来し方行く末に思いをはせたのでしょうか。
平成も残りわずかとなりました。天皇の代替わり、改元の日があらかじめ分かっているという状況は異例です。最近、日本史に関する本が人気ですが、その背景には時代の節目に立っているという意識があるのかもしれません。先人の歩みを知ることは将来を考えるヒントにもなります。
日本人としての誇りを持つため、あるいは、何かを主張するため。そうした目的が先に立つと、歴史を見る目が曇ります。事実を正確に理解するには、地道な研究を続ける専門家の助けが不可欠です。
今月号の特集は「日本史の大論争」。巻頭の対談では、「いくら調べてもわからないこともあります」と語る大石学教授に、漫画家よしながふみさんは「先生から『わからない』と言われると、逆に私は私の好きにしていいんだなと自信を持てます」と応じます。立場は違っても、史実に向き合う誠実さは共通しています。
インスタントラーメンが発明され、日本の家庭から世界へと広がるさまは戦後復興の象徴のようです。我々は歴史の目撃者であるだけでなく、当事者でもあります。平成の先はもうすぐ。日本史を貫く棒の如きものは何でしょう。
編集長 穴井雄治