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2021年5月号【編集長から】

 仲間内で雑談をしているときに、陰謀論者が一人いると話が大いに盛り上がります。なんてことはない出来事に人間関係や権力闘争を上手にからめ、事実関係をすべて知っていても思わず引き込まれてしまうような、壮大なストーリーに仕立て上げます。そんな内輪話なら良いのですが、今世界で広がる陰謀論は、格差などを背景に深刻な対立を生み出しています。今月号の特集「陰謀論が世界を蝕む」はいかがだったでしょうか。

 「ヘイトが心の中にあるのは仕方がない。でもそれをスピーチにしたり、アクションにしたりすることは、やっぱりよろしくない」。巻頭の対談で森本あんりさんはこう語っています。自分の心の中まで変えるのは無理でも実際の行動では考えが違う相手を尊重する。それが対立を深めないための智恵なのでしょう。

 しかし、昨今の状況を見ていると、いずれはその心の中までも裁かれる時代が来る気がしてなりません。SNSなど情報通信技術の発展は、気軽な発信を可能にするとともに、聞き流したり見逃したりすることを許さない監視社会を作り上げてきました。今や仲間内であっても心の中を晒すことにはリスクが伴うようです。善と悪の間に横たわる膨大なグレーゾーンの中に生きている身には、清く正しく不寛容な社会がとても窮屈で恐ろしく感じます。

編集長:吉山一輝