2021年8月号【編集長から】

 今月の特集は「教養と自己啓発の深い溝」でした。教養と自己啓発のどちらが上でどちらが下かというつもりはありません。いずれも生きて行く上で大事な学びでしょう。一方でともにどこか捉えどころのない言葉でもあります。思い出すのは若いころ、年配の先輩に飲みに誘われ、教養についてのうんちくを聞いときのことです。知識が豊富で人当たりも良く、仕事に前向きなその先輩は、にこやかに穏やかに、教養の何たるかとその必要性を語ってくれました。社会人になって間もない私は「教養人」とはこういうものかとありがたく拝聴したものです。ところが興に乗った先輩は「僕は官学を出たからそういう教育を受けているけど、私学出はだめだね」とポロリ。その程度の物差しで教養を語っていたのか。しかも私学出の私の前で。先輩に対する評価は一瞬にして「えせ教養人」に変わりました。

 オリンピックが近づいています。個人的には五輪開催に賛成してきましたが、反対意見にもうなずける部分が多々あります。新型コロナの感染状況はどうなるのか、ワクチン接種はどれほど進むのか。状況は刻一刻と変化しています。先日、ワクチン接種券が届いたので、会社近くの大規模接種会場で一回目の接種を受けてきました。五輪を開催して良かったと思える日が来ることを願いつつ。

編集長:吉山一輝