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2021年9月号【編集長から】

「昼に家で飯を食って、また松根油を取りに山に行こうとしたら、親父に『もう行かなくていいぞ』と言われたんだ」。父の8月15日の記憶です。母は上空をB29が通過するたびに友達と「今に見ていろB29」と叫んだと話していました。昭和40年代生まれの私の子供のころには、まだ身近に戦争の記憶がありました。初めて連れて行ってもらった上野動物園では、白装束の傷痍軍人がアコーディオンを弾いていました。徴兵経験のある祖父が戦友と再会する場に連れて行かれ、お爺さん二人が抱き合って泣く姿をぽかんと見ていた経験もあります。いずれも、すっかり忘れていましたが、この号の編集後記に何を書こうか考えていたときに思い出しました。父母も祖父も故人となり、これらの小さな記憶は消えていくのでしょう。個々の記憶が風化したあと、昭和の戦争は歴史としてどう刻まれていくのでしょうか。研究者たちの努力は、今も続いています。

 コロナ禍の東京五輪。7月23日の少し寂しい開会式は、人が集まることで生まれる迫力や高揚感の大切さを、空っぽの観客席が伝えていました。それでも五輪。競技が始まると躍動するアスリートの姿に熱中させられました。検証、反省、改善、やるべきことは多々あるでしょう。が、まだパラがあります。選手も関係者も最後まで頑張れ。

編集長:吉山一輝