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2021年10月号【編集長から】

 20年ほど前、政治家の同行取材で北京に行ったときのこと。滞在中はずっと中国共産党中央対外連絡部の男女二人が取材団と一緒でした。案内兼監視役といったところでしょう。女性はまだ20代、男性は30過ぎぐらいだったでしょうか。その所属から中国のエリートであることは間違いないのですが、なんとも憎めないコンビでした。女性は、何度訂正しても満面の笑みで「吉川さん」と呼びかけてくるし、天津出身の男性は聞いてもいないのに「天津に天津飯はありません」と力説していました。最終日に案内された外国人向けの土産物店では、日本人は高額な土産を買う気もなく時間をつぶしているだけでしたが、ふと見ると、対外連絡部の男性がレジに並んでいました。「何買うの」と聞くと、怪しげな健康食品を見せ、嬉しそうに「これすごく体に良いらしいんです。故郷に送ります」。周りの日本人が「欺されるな」と止めても、結局買ってしまいました。仮にサクラだったとしても、やり方が下手過ぎました。

  あれから月日がたち、発展を続けた中国は今や強大な経済力、軍事力で、周辺国はもとより世界を脅かす存在になっています。覇権を目指す中国の中枢で、今もあの二人はバリバリ働いているのでしょうか。もしそうなら伝えたいものです。「君たちに戦狼外交は似合わないよ」。

編集長:吉山一輝