2022年2月号【編集長から】

 今月号の巻頭特集は大学です。コロナ禍の2年間、各大学は智恵を絞り、さまざまな工夫をこらして学生たちに対応してきました。感染症対策として導入したリモート授業は、その活用場所を広げ、海外との新たな交流促進や、学生と教授の個別対話の増加といったメリットをもたらしました。一方で、キャンパスライフもサークル活動も制約され、孤独に苛まれた学生がたくさんいたことも事実です。「私たち大学業界はコロナに転ばされましたが、同時に多くのことを学びました。転んでもただでは起きません」。特集記事の中で早稲田大学の田中愛治総長はこう語っています。世界中で猛威をふるったパンデミックの中で、必死にもがいて切り拓いた道が、大学にとっても学生にとっても明るい未来につながっていることを願ってやみません。

 新年に相応しい話題ではありませんが、山奥にある私の父の実家の葬儀は、土葬でした。実家から棺を担ぎ、親族らが縦一列に並んで鬱蒼とした檜の山の中腹にある小さな墓まで埋葬しに行きました。「八つ墓村みたいだな」。初めて参列した中学生のときの私の印象です。同時に「土になるのか。やっぱり死ぬのは嫌だな」とも。「死」の文字を見ると今もあの埋葬の情景が浮かびます。今月号の第2特集は「宗教の居場所、死生観のゆくえ」です。

編集長:吉山一輝