2022年6月号【編集長から】
★認知症で入院していた母とは毎週末、病院の面会室でポテトチップスを食べていました。病院食に飽きた母の食欲は旺盛で、二人で黙々と食べ続け、毎回3袋は空にしました。食べている間は「いつ家に帰れる」と聞かれずにすんだので。あるとき母が「ここはしょっちゅう映画の撮影をしてる」とぽつり。「そうなの」と問い返すと、ガラス越しに見える病院の中庭に目をやって「今もそこを兵隊さんが通ったよ」。もちろん私には見えません。認知症による幻覚でしょう。ただ、失うものが多いはずの老いの先で、私には見えないものが見えるようになるなら、それも悪くないかなと。今月の特集は「老いと喪失」です。
編集長:吉山 一輝
★ウクライナ侵攻以降、ロシアのプーチン大統領が公の場で発言する姿がめっきり減りました。メディア対応はお手の物で、年末恒例の記者会見が4時間を超えることもあったのに、長広舌の封印は身の危険を察してのことか。暴挙が招いた凄惨な事態に向き合う姿勢や、語る言葉を持ち合わせているとも思えません。
★「自分が大統領のままなら侵攻はなかった」とは米国のトランプ前大統領。人気は衰えず、バイデン政権を揺さぶります。能弁な政治家を横目に沈黙を続ける中国の習近平国家主席の動きもしっかり取り上げていきます。
五十嵐 文