2022年8月号【編集長から】

★羊肉の串焼き、ザリガニ、アヒルの血を固めた「鴨血(ヤーシュエ)」の火鍋など、中国本土で人気の郷土料理をそのまま提供する店が最近、東京や近郊で増えている。日本人向けにアレンジされていない中華料理は「ガチ中華」と呼ばれ、在日中国人のほか、若い世代の日本人客の姿も目立つ。コロナ禍で日中間の人の往来は激減したが、食文化は海を越える。

★食品業界の友人によると、中国各地で多店舗展開する大手外食チェーンが日本に進出し、SNS動画の拡散などでブームに火をつけたという。日本にいながらにして多様な本場の味を堪能できる時代だというのに、中国には「一党独裁」「専制主義国家」といったレッテルを貼るだけで、その振る舞いのすべてを説明しようとするのは無理がある。ロシアがウクライナに侵攻したことで、台湾統一を悲願とする中国の真意と実力を見定める必要は増している。特集では政治、軍事、経済、自治組織などの分野に精通した専門家が中国の実像に迫った。

★中国の台頭で超大国・米国の相対的な力は低下したが、なお世界の行方のカギを握っているのは間違いない。米国専門家で一層の活躍が期待されながら急逝した中山俊宏さんを友人が追悼した。今月号から編集長を務めるにあたり、中山さんに続く気鋭の論客の言葉を読者に届ける役割の重さを感じている。  

編集長:五十嵐 文