2022年10月号【編集長から】
★アメリカ大リーグ・エンゼルスの大谷翔平選手がスタジアム最深部にホームランを放つと、実況アナウンサーは「デッドセンター(ど真ん中)!」と絶叫する。同じ言葉を政治に用いれば、左と右のいがみ合いが高じて中道(center)が死んでいる(dead)現状を表す。過激なトランプ前大統領が退任後も影響力をふるい、2年後の大統領選での返り咲きも取り沙汰されるというから、分断は相当深刻といえる。
★日本の場合は2012年以降、自民党を中心とする保守政権が政界のセンターを占める。その軸が「右にずれて、気づけば左に立っていた」と、日本遺族会の前会長で「右寄りの中道」を自任してきた尾辻秀久参議院議長が本号のインタビューで語った。靖国神社に参拝するのは右、反対するのは左という物差しだけで政治家の立ち位置を判断しようとすれば、精度を欠く。左右の「横軸」に加え、主張が異なる相手を受け入れる度量の大きさや人間味といった「深度」にも目を向けたい。
★左右を取り込み膨張する与党に、多弱の野党はどう対峙すべきか。特集は「非・保守という選択肢」。政治勘とスラング満載の弁舌で政財界に食い込むラーム・エマニュエル駐日アメリカ大使を取材し、洋の東西を問わずリベラルは理屈優先という先入観は吹っ飛んだ。政治家は気迫の「強度」でも差がつく。
編集長:五十嵐 文