2023年1月号【編集長から】

★サッカーのワールドカップ(W杯)カタール大会で日本が強豪ドイツに逆転勝利したのは、監督の思い切った戦術変更と選手交代が功を奏したことが大きい。これが中国のような巨大国家の運営となると、トップがいったん掲げた政策を修正するのは難しくなる。「ゼロコロナ」政策に基づく厳しい行動制限の終わりが見えず、我慢の限界を超えた庶民が弾圧を覚悟で抗議の声を上げ、トップ交代まで求める異例の事態に発展した。

★中国でスパイ活動をしたとして拘束され、6年も囚われの身となった鈴木英司さんは、別の看板政策の実績作りに利用された可能性がある。習近平政権は2014年以降、治安維持を目的に「反スパイ法」や「国家安全法」を施行したが、今月号の鈴木さんのインタビューによると、中国は1516年を「国家安全年」と位置づけ、摘発を強化していた。鈴木さんが捕らえられたのは、キャンペーン中の16年だった。その後も中国の招きで訪中した大学教授が一時拘束されるなど深刻な事例は後を絶たない。中国ではトップの発言がなければ現場は動けない。中国の古典に「君子は豹変す、小人はをむ(表面を改める)」とある。求められるのはどちらかはっきりしている。

★中国の法制を確認するのにスマホを多用した。特集タイトル「効率重視の教養は本物か」を自問しつつ。

 

編集長:五十嵐 文