2023年2月号【編集長から】

★昨年末、広島に行く機会があった。原爆投下の3日後に運行を一部再開して復興のシンボルとなった路面電車に乗り、被爆の実相を伝える広島平和記念資料館の展示、かつての町並みや生活様式がうかがえる被爆遺構などを初めて見て回った。一日ではとても足りない。再訪を誓いながら東京への帰途に就いた。

★折しも広島では岸田首相が提唱し、自ら参加した核軍縮に関する「国際賢人会議」が行われたところだった。5月には先進7ヵ国首脳会議(G7サミット)が開かれる。ウクライナ戦争の出口は見えず、ロシアのプーチン大統領が核の恫喝を繰り返す中、人類史上初めて核兵器の惨禍に遭ったヒロシマに世界の政治リーダーが集い、「核なき世界」への取り組みを模索することには歴史的な意義がある。泊まりがけで飲食を共にし、知恵を出し合い、問題の解決策を探る。首脳のキャンプともいえる特別なサミットで、より安全な世界を取り戻す道筋を示すことができるだろうか。

★キャンプの語源はラテン語で平らな場所を意味するcampus(カンプス)で、大学構内を示すキャンパスとしても使われるようになったという。特集は「大学再編で日本は生き残れるか」。低落傾向の日本の研究力を取り戻そうと大学の選別に乗り出した国の事情、国内外の競争に晒される大学の本音に迫った。

編集長:五十嵐 文