2023年5月号【編集長から】

★女ざかりは何歳までか。いや、その設問自体がくだらない。アジア系俳優として初めてアカデミー賞主演女優賞を受賞したマレーシア出身のミシェル・ヨーさんを見ていてそう思った。3月の授賞式のスピーチで、60歳のヨーさんは「女性たちよ、『お前のプライム(prime=全盛期)は過ぎた』なんて誰にも言わせないで」と語りかけ、50代の私は大いに勇気づけられた。

★アメリカでは2月、CNNテレビのキャスターが、2024年の大統領選に共和党から出馬する意向を示した51歳のニッキー・ヘイリー元国連大使について「もうプライムではない」と言い、女ざかりは「40代」までだと答えて非難された。その前にはヘイリーさんが、民主党で80歳のバイデン大統領を念頭に「75歳以上の政治家に認知テストを」と発言している。性別、年齢、党派の対立を煽る不毛な言葉の連鎖を、ヨーさんは映画で見せたクンフーのように一撃で見事に断ち切った。

★テレビにはプライムタイム(視聴率の高い時間帯)がある。岸田文雄首相のウクライナ訪問は、中露首脳会談、ワールド・ベースボール・クラシックの日本代表「侍ジャパン」活躍のニュースと並んで取り上げられた。訪問は首相が外務官僚に発破をかけて実現したが、最近の霞が関はどうも元気がない。特集「官僚の没落」で背景を探った。

編集長:五十嵐 文