2023年6月号【編集長から】

★コロナ禍では「ステイホーム」「自粛警察」など様々な標語や造語を耳にしたが、「デスク爆弾(desk-bombing)」という言葉を知った時の衝撃は忘れられない。英紙『フィナンシャル・タイムズ』に昨年秋に掲載されたコラムによると、職場で同僚の机に近づき、話しかけることを指す。テレワークや感染予防対策のため同僚と職場で顔を合わせる機会が減り、仕事上のヒントにつながる雑談の少なさを残念に思っていただけに、前触れなしの声がけは爆弾魔にたとえられるほどの迷惑行為になり得る、という指摘に絶句した。

★相手が目の前にいてもメールで伝える傾向はコロナ前からあり、3年続いたマスク生活で更に広まったかもしれない。5月の連休明けにコロナの感染症法上の分類は季節性インフルエンザと同じに引き下げられた。仕事の流儀は変わるか。

★コロナで止まっていた地方から東京に向かう人の流れが再び加速し、10年前に本誌が指摘した「地方消滅」はより現実に近づいている。今号の特集は「東京再膨張─なぜ地方では生きられないのか」。関西出身で入社2年目の同僚は「若い時しか挑戦できない」と上京して出版社に就職することを決めた際、両親に「東京でなければだめなのか」と猛反対されたという。彼女の話を聞くうちに特集のイメージが固まった。「デスク爆弾」を投下してよかった。

編集長:五十嵐 文