2023年11月号【編集長から】
★政治家や官僚がよく使う片仮名語に「コミットメント」がある。岸田文雄首相は9月に国連総会で演説した際、多国間主義に「コミットしよう」などと2度言及し、公式文書にも説明抜きで使われている。日本のメディアは文脈によって「関与」や「公約」に置き換えたり、「コミットメント(確約)」とカッコ付きで説明したりしているが、それだけでは実行に向けた「決意」の強さや「責任」の重みが十分に伝わらない気がして、言い換えには毎回苦労してきた。
★片仮名語をそのまま使った方がしっくりするケースもある。念のため日本語を補いつつ紹介すると、有名企業の不祥事が相次ぎ、「コーポレートガバナンス(企業統治)」や「コンプライアンス(法令順守)」は十分だったのか、職場に「ハラスメント(嫌がらせ)」はなかったのかが問われている、といった具合だ。そしてジャニーズ事務所の創始者ジャニー喜多川氏は、日本のタレント文化の立役者として崇められるより、多くの少年を長きにわたり食い物にしてきた「プレデター(捕食者)」として記憶されるに値する。
★ジャニーズ事務所顧問弁護士の木目田裕氏が本誌インタビューで、性加害問題について「被害者や関係者の保護」「これからの行動で信頼回復を図ること」が必要だと語った。事務所が揺るぎないコミットメントを示す時だ。
編集長:五十嵐 文