2024年3月号【編集長から】

★インド映画『きっと、うまくいく』は、過酷な受験戦争と競争社会を象徴するエリート工科大学で、自分らしさを貫く自由人ランチョーを親友2人が回想する物語。教科書通りの答えに疑問を呈し、学長に目を付けられても、口癖の「All is well」で自分を奮い立たせ、機転を利かせてピンチを次々と切り抜けていく。

ChatGPTなどの生成系AIが、日本の大学を揺るがしている。人間が書いたものと見分けがつかない自然な文章を作る一方で、息を吐くようにうそもつく。最新のテクノロジーを教育や研究にどう活用すべきか。今号に掲載した42大学アンケートの結果や専門家の論考で興味深いのは、出力結果を鵜呑みにしてレポートや論文を作成しないよう学生に求めるよりも、AIに何をどう聞くかという「設問力」を鍛えることが重要だという指摘である。AIは質問の仕方によって答えを変える。型破りの質問をぶつけてくるランチョーを目の敵にしていた学長がやがて心を動かされ、退学処分を撤回して首席での卒業を祝福したように、自分の頭で考える学生を育てる側の眼力が問われるのだろう。

★こちらの設問力が足りなかったのか。岸田文雄首相をインタビューしたが、政治とカネの問題で納得のいく回答は引き出せなかった。派閥解消という切り札できっと、うまくいくとは限らない。

編集長:五十嵐 文