2024年4月号【編集長から】

★編集者は著者を支え、雑誌や書籍の刊行に向けて進行を管理する裏方である。黒子に徹するのが美徳だと思ってきたが、一体の人形を三人がかりで操る文楽では、頭と右手を操作する「主遣(おもづか)い」が頭巾や黒装束を着けずに顔を出して舞台に登場する「出遣い」が一般的になったと、伝統芸能に詳しい友人から聞いた。「論壇誌」と呼ばれる総合雑誌の歴史は長く、言論空間における伝統芸能に近い存在かもしれない。SNSの普及で個人による発信が当たり前となる中で、本来は陰の存在である編集者も時には「出遣い」で変化を体現し、舞台を盛り立てていく必要があるのではないか。そんな思いを『世界』『正論』の両編集長に伝え、今号の編集長鼎談が実現した。雑誌の論調は三誌三様だが、いろいろな意見を包摂できる媒体だからこそ、一誌だけ生き残るよりたくさんの雑誌を書店に残したい。その認識と、編集長ならではのプレッシャーとやりがいを二人と共有することができて、とても幸せで有意義な2時間半だった。

★今号は女性比率が高い。ポスト岸田に急浮上した上川陽子外相が寄稿し、山東昭子氏は「次の総理は女性に」とインタビューで語った。「これからの時代、女性同士の......」で間を置いた山東氏に「連帯?」と聞きかけたら「戦いを期待します」。そうなれば政治もようやく変わる。

編集長:五十嵐 文