2024年7月号【編集長から】

★映画『パーフェクト・デイズ』で役所広司演じるトイレ清掃員が、東京・渋谷に実在する「透明トイレ」の使い方を外国人女性に尋ねられる場面がある。ガラス張りの見た目には誰しも戸惑うが、中が清潔かどうか、怪しい人がいないかどうかが外から見え、使用時に内カギをかければ不透明になるという優れものだ。

★ガラスの壁の斬新なトイレは、映画のヒットもあって国内外の注目を集めた。「ガラスの壁」は、女性が枢要な部署に異動できず、昇進に必要な職歴を積めない状況を指すことがある。女性がリーダーになることを阻む「ガラスの天井」は、「ガラスの壁」の結果とみることもできる。それでも最近は、少なくともそこに壁や天井があるという事実を多くの組織が認め、意識するようになったのは前進だろう。自民党内で女性総理という選択が取り沙汰されているのは、いよいよ最も高くて硬い天井の取り壊しにかかろうとしているのか、あるいは失敗のリスクが高い危機に際してあえて女性を「ガラスの崖」に立たせるつもりか。思惑はどうであれ政治と国民を隔てる壁の可視化につながればいい。

★本号表紙にスーツ姿の女性像を置くことを考えたものの、固定観念で服や髪型を選ぶことになるのでやめた。今号で編集長を退くが、ステレオタイプの思考に陥りそうな時は雑誌を手に取ろう。

編集長:五十嵐 文