2024年12月号【編集長から】

★よく響く低い声が特徴だった父。母を亡くして会話が減った影響か、声が掠れて聞こえづらくなりました。こちらが話しかけても返答まで時間がかかるように。そんな様子を心配した妹が、父に犬のぬいぐるみを贈りました。季節や時刻に応じた発言をするほか、簡単な挨拶にも反応を返すという商品で、発話のきっかけになればという目論見です。意外にぬいぐるみを気に入った様子の父に電話をかけてみて仰天。声に張りが戻り、問いかけにテンポ良く答える父に、母が亡くなる前の姿を思い出しました。効果を喜ぶ一方、子どもたちはぬいぐるみに負けているのでは、という思いも浮かびましたが......。

★一人暮らしの高齢者が急増するなか、ゴミ屋敷や陰謀論、さらには闇バイトによる特殊詐欺や強盗まで、社会はリスクに満ちています。最期まで明るく過ごせるよう、前向きに生きるコツから防犯までヒント満載の巻頭特集をどうぞ。

★しかし大変なのは、社会保険料などで高齢者を支える現役世代も同じ。その一端を感じたのは、総選挙での国民民主党の躍進でした。「手取りを増やす。」をキャッチフレーズに、現役世代に焦点を当てた戦略が功を奏しました。闇バイトの背景には若者の経済難もあると言われます。現役世代の苦しみが少ない社会は高齢者が安心して過ごせる社会でもあるはずです。

編集長:田中正敏