2025 年1月号【編集長から】

★子どもの頃、生まれ年を聞かれると決まって「昭和52年です」と答えていました。「1977年」と西暦で答えると、英ロックバンド「オアシス」のことを「オエイシス」と呼ぶような、正しいけれど、どこか気恥ずかしい違和感を覚えたものです。平成に入ってその感覚は徐々に薄れ、西暦を用いることが増えました。それでもある時期まで、巻頭座談会で紹介されている後藤田正晴さんのように、年長者から「昭和で言ってもらわないとさっぱりわからん」といった反応がありました。行政書類に元号で記入するたび、そんな会話を思い出します。

2025年は「昭和100年」にあたります。戦争、復興、高度経済成長、学生運動、バブル......。小誌ではこの1年間、明暗さまざまな出来事が起きた昭和時代を振り返って参ります。また、1月に阪神・淡路大震災、3月に地下鉄サリン事件が起きた1995年から30年の節目でもあります。日本社会の転換点となった激動の年の意味を問い直す機会にもなることでしょう。

★米大統領選はトランプ氏が勝利しました。第2特集では、国際秩序や民主主義の行方を危惧する論考が並びます。一方、どの寄稿も混迷の中に希望の芽を探る点でも共通しています。蛇は「復活や再生」の象徴とされることもあるとか。巳年がそうした1年になることを願います。

編集長:田中正敏