2025年2月号【編集長から】

★「逆さ地図」をご存じでしょうか。安全保障問題に関心があれば一度は目にしたことがあるかもしれません。この正式名称「環日本海・東アジア諸国図」は、南北を逆さにして日本周辺を示した地図で、「中国、ロシア等の対岸諸国に対し日本の重心が富山県沖の日本海にあることを強調するため」富山県が作成したものといいます。その作成意図とは別に、中国やロシアにとって日本列島が太平洋に出る際の邪魔な「フタ」であることが一目瞭然なため、日本の安全保障環境を示す際によく紹介されるようになりました。「地政学」と聞くと、この地図のことが頭に浮かびます。

★国益、戦略、そして地政学。最近では当たり前に使われるこれらの言葉を口にすると、強い反発を招く時代がありました。そうした概念が悪用された歴史には意識的である必要があるものの、安全保障環境の悪化著しい今、避けて通ることはできない言葉であり、考え方でしょう。第1特集では地政学を鍵としながら、現在の世界情勢を考えました。

★島田雅彦さんが勧めているように、私も企画を練るとき、原稿修正の提案を考えるとき、行き詰まると散歩に出かけます。足を動かすとアイデアだけでなく、古い知人の顔や声が浮かぶこともあります。お世話になった方々の思い出とともに歩を進めるのも、散歩の喜びのひとつです。

編集長:田中正敏