2025年9月号【編集長から】

★「引き揚げの時は苦労したのよ」。日本統治下にあった朝鮮からの引き揚げを経験した父方の祖母が、しみじみと語るのを耳にした記憶があります。日ソ戦争をはじめ、「815日」以降も帝国の旧支配地域で続いた戦争を論じた今号の対談や論考を読むと、現代の想像を超える「苦労」だったことでしょう。「なんだか暗い昔話」が貴重な体験談だったと気づいた頃には、話を聞くことはかないません。

★それでも今の時代は、前の世代の足跡をたどりやすくなりました。特集「自分史を書く、先祖をたどる」のなかで紹介されている「国立国会図書館デジタルコレクション」。丸山学さんが書くように、その威力は「怖いほど」です。京城帝国大学で教えていた祖父の名前で検索すると、朝鮮総督府発行の機関誌『朝鮮』昭和196月号への寄稿がヒット。論壇誌のスタイルをとる『朝鮮』掲載の文章を読むうちに、孫ではなく編集者として祖父と向き合っているような感覚に─。あの戦争をどう見ていたのか、日本統治をどう考えていたのか。「対話」を始めるのは今からでも遅くない、そう思いました。

★中北浩爾さんが指摘されるように、参院選では年齢によって投票先が大きく分かれました。若い世代の力が示された意義は大きい一方、危うさも。異なる世代への想像力が必要な時と感じます。

編集長:田中正敏


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