2025年12月号【編集長から】
★2016年、トランプ氏が米国大統領に初当選した際の衝撃を思い返すと、担当した1冊の本の思い出が甦ります。水島治郎著『ポピュリズムとは何か』(中公新書)。14年に始まった企画の執筆が佳境に入った16年、英国のEU離脱に続いて、当初は泡沫候補と思われたトランプ氏が共和党の大統領候補となり、11月の本選でヒラリー氏を下します。その翌月に刊行された本書は発売当初の反響はもちろん今も手に取られ、今号でも今野元さんの論考で引用されているように、ポピュリズムを考える際には欠かせない本となりました。本書の特徴は、大衆迎合の政治潮流と斬って捨てることなく、20世紀半ばの南米などにも遡りながら、民主主義の矛盾を体現する存在としてポピュリズムを正面から論じたことでしょう。そんな一筋縄ではいかないポピュリズムの攻勢を受けている大学は、どう向き合うのか。巻頭特集では、単純な善悪二元論を超えた考察が並びます。
★事前の予想を覆し続けたという点では、今回の高市早苗政権の誕生も同じでした。最有力と見られた小泉進次郎候補を自民党総裁選で破ったものの、公明党が連立を離脱。そこから日本維新の会との閣外協力にこぎつけて政権発足......という経緯は「まさか」の連続でした。第2特集では、そんな激動に揺れた日本政治の本質を見つめます。
編集長:田中正敏
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