20年9月に刊行すると、瞬く間にベストセラーとなった『独学大全』(ダイヤモンド社)。その著者でブロガーの読書猿氏は独学を続けるコツについて、挫折を深刻に受け止めず、むしろ自分のダメな部分を具体的に知るための貴重な機会として認めるのが大事と言う――
(『中央公論』2021年8月号より抜粋)
(『中央公論』2021年8月号より抜粋)
- 「自分の評価を健全に下げる」
- 人はなぜ学ぶ?
- モチベーションを支える集団
「自分の評価を健全に下げる」
─独学を続けることができるのはなぜですか。
正直言うと、独学をずっと続けてきたわけではありません。確かにいろいろなことを独学してきましたが、何度も中断し挫折することを繰り返してきました。それは今も変わりません。むしろ以前よりずっとカジュアルに挫けるようになりました。大袈裟に言えば、毎日どころか、一〇分ごとに挫折しています。
「カジュアル」というのは、どんどん挫折して、どんどん立ち直って学ぶことを再開するという意味です。かっこよくスマートにやろうとしてうまく行かなくて「やれやれ、このやり方は無理だったか。じゃあ、違うのを試そうか」と次の試行錯誤にすぐに移る。この方が、失敗を深刻に受け止めるより、あるいは自分の失敗を認めないと頑張るより、ずっと楽に先へ進めると思います。
「自分の評価を健全に下げる」と言っていますが、人間、そんな大したものじゃない。すぐに飽きるし、移り気だし、楽な方法に逃げるし、それに見栄を張る。それを認めず頑張るのも一つのやり方でしょうが、そのために必要な余計な努力を前に進むのに注いだ方が良い気がします。
挫折を深刻に受け止めず、むしろ自分のダメな部分を具体的に知るための貴重な学習機会として承認する。それが途中放棄を繰り返しながらも独学を続けるコツだと思っています。