リアル店舗苦難の歴史
今世紀になってから、eコマースの台頭により「リアル店舗」自体がどんどん減ってしまったのはアメリカも日本と同様である。特に極端な例は、街のCDショップだろう。
日本には、まだタワーレコード(タワレコ)やHMVなどが残っているが、アメリカにはそのようなCDショップは跡形もない。
2000年代初めのニューヨークには、タワレコやヴァージン・メガストアーズなど世界チェーンの巨大店舗があり、私もよく備え付けのヘッドフォンで好きなミュージシャンの新作の試聴をしたものだ。しかし、05年から10年にかけてそれらは軒並み撤退していった。いまでは、個人経営の店がごく僅か残るのみである。
これに近いことが近年、書店界でも起こっていた。11年には全米第2位の書店チェーン、ボーダーズが経営破綻し、愛書家の間では書店もCDショップのように消滅していくのではないかとささやかれた。
バーンズ&ノーブルの大規模な店舗縮小の可能性が報じられたのは、16年のことだった。当時の同社の店舗数は全米で647。『ウォール・ストリート・ジャーナル』などによれば、そのうち16年4月末までに店舗のリース契約を更新したのが442。残り200ほどが宙に浮いた状態だったが、さまざまな関係者の証言をもとに、新規開店予定の店舗数なども加味したうえで、「22年までに197店舗が閉店へ」と報じられたのだ。
当時、一部の地元メディアは、ショッピングモールの新規オープンが減っているのもリアル店舗減少の一因ではないかと報道していた。モール社会のアメリカでは郊外に必ず人々が集まるショッピングモールがあり、書店はそのようなモールに入居していることが多いからだ。