日本では、書店の減少が続き、本屋さんが1店舗もない市町村が全国の4分の1に達している。ところが、今、アメリカでは、絶滅の危機にあったリアル書店が増加しているという。その背景を現地からリポート。
(『中央公論』2023年7月号より抜粋)
(『中央公論』2023年7月号より抜粋)
- 独立系書店も大手書店も
- リアル店舗苦難の歴史
- アマゾンの台頭
- 「最近読んでいる本はなに?」
独立系書店も大手書店も
世はネット全盛時代。欲しいものがあればわざわざ出かけなくとも、自宅でアマゾンや楽天のウェブサイトをクリックすればほぼ何でも揃う。そんな時代に街から少しずつ書店が消えていることに危機感を感じている人は少なくないだろう。
アメリカでも、近年同じような現象が起こって「いた」。いた、と過去形なのは、最近事情が変わってきているからだ。ニューヨークでは、一時期減ったリアル書店が、コロナ禍以降、少しずつ復活しているのだ。
タウン情報誌『タイムアウト・ニューヨーク』は2022年9月に「ワクワクするような独立系書店がニューヨーク中に続々オープン中」と報じた。例えば、クリスマスの巨大ツリーやアイススケートリンクで知られる観光名所の一つ、ロックフェラーセンターには独立系書店の一つ「マクナリー・ジャクソン」が新店舗をオープンし一大ニュースとなった。ほかにも、ヴィンテージのペーパーバック、SFやミステリー、アート、ニューヨークの観光本が専門の「バーント・ブックス」、カフェやポッドキャストスタジオを併設した「P&Tニットウェア」、古本の「リーブス」や希少本も扱う「ブックス・アー・マジック」の2号店、新刊と古本の両方を扱う「トラブルド・スリープ」など、個性的な独立系書店のオープンが続いている。
『ニューヨーク・タイムズ』によれば、ここ数年の間に全米で300以上の独立系書店が開店しており、さらに今後数年の間に約200店が開店を予定しているという。
今年に入ってその潮流は大手チェーン書店に及んできた。1917年ニューヨークで創業の米書店最大手バーンズ&ノーブルが、「過去15年間で100店舗以上を閉鎖した同社が、復活の兆しあり」と、地元メディアに報じられたのだ。