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プリキュア「女の子だって暴れたい」から20年――21世紀型アニメヒロインが大人をもひきつけるわけ

鷲尾 天(東映アニメーションプロデューサー) 聞き手:鈴木美潮(読売新聞教育ネットワーク事務局専門委員)
鷲尾 天氏
 テレビアニメ「プリキュア」シリーズは2004年の放送開始から今年で20年を迎えた。それまでの少女向けアニメとは異なり、主人公の女子中学生たちが素手で格闘し、敵を倒していく物語で、未就学女児にとどまらず大人たちにも感動を与え続けている。第一作「ふたりはプリキュア」からシリーズに携わり、「プリキュアの父」と呼ばれることもある鷲尾天プロデューサーに人気の秘密を聞いた。
(『中央公論』2024年6月号より抜粋)

徒手空拳で戦う女子中学生

――プリキュアシリーズは「女の子だって暴れたい」という挑発的なコンセプトとともに登場しました。女児向けアニメといえば、それまでは魔法のアイテムを使ったり「王子様」に憧れたりと、メルヘン的な映像を見せ場とする作品が多かった印象がありますが、プリキュアでは主人公たちの筋肉の動きが見えるような迫力ある本格アクションが描かれています。


 女子が主役のアクションをやりたかったのです。戦う女子のイメージを確立させたのは(アニメでのダイナミックなアクションの演出が得意な)西尾大介監督の力によるところが大きいです。

 徒手空拳で戦うのは、女児向けアニメでは初めてに近かったかもしれません。ただ、男児向けアニメや特撮ヒーロー番組では、自分の体一つで敵に立ち向かうのは普通のことでした。それを取り入れてみたわけです。


――女性戦士を描いたアニメとしては、国内外で大ヒットした「美少女戦士セーラームーン」(1992年)があります。


 戦う女子が主役という意味では近いかもしれませんが、放送時期が離れていることもあり、キャラクターとしての女性のとらえ方、主人公の行動原理は、時代を反映してずいぶん変わったと思います。プリキュアでは話の主眼を、彼女らの日常にある部活や友人関係に置き、恋愛や結婚への願望といった要素は、あえて盛り込まないようにしました。そこは、彼女らの拠り所ではないな、と思ったからです。


――「仮面ライダー」などの特撮ヒーローは意識されましたか。


 別のキャラクターが登場しても同じシリーズとして括れるかどうか、という点では参考にしました。仮面ライダーやスーパー戦隊シリーズは毎年、登場するヒーローが変わる。それを女児向けアニメでもやってみる価値はあると思いました。


――プリキュアの主人公は第一作では2人でしたが、「Yes!プリキュア5(ファイブ)」(07年)から戦隊のように数人のチームで戦うようになります。


 実は、参考にしたのは『湘南爆走族』(作・吉田聡)という、暴走族5人の恋愛や友情を描いた漫画です。5人の立ち位置が平等で、役割はあれども上下関係はない。そういうチームを描こうとしました。

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