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昭和レトロはどこへ行く――令和の若者にウケるわけ

高野光平(茨城大学教授)

昭和の四つの魅力

 若者が中心なのは、旧ツイッターやインスタグラムがおもな舞台だったことが大きい。『ALWAYS』の時は中年世代の「昔は良かった」需要が強かったが、今回のブームはそうではない。どちらかというと1980年代のレトロブームに近い。

 令和の若者が昭和に惹かれる理由について大学生に話を聞くと、おおむね四つの魅力を有していることが浮かび上がってくる。

 第一の魅力はデザインの面白さである。昭和の商品デザインは、今ではあまり見られない丸みを帯びたフォルムや派手な色づかい、主張の強いフォント、無駄な装飾など、全体的にデザインが過剰で、それが逆に新鮮でおしゃれに映る。クリームソーダのどぎつい着色もそうだし、アイドルのフリフリの衣装やパーマのかかり具合、歌詞と無関係な無機質な振り付けなどもじつに過剰で、面白く感じるようだ。

 第二の魅力はアナログの心地よさである。ラジカセ、レコード、「写ルンです」などは、ボタンをガシャンと押したりダイヤルをカリカリ回したりする手触りがよいし、メディアは物質なんだと実感できて楽しいという。聴く、録る、撮るなど用途ごとに異なるデバイスを使い、コンテンツにたどりつくまで手間がかかるのも新鮮な体験になっているようだ。スマホの画面を指でなぞれば何でもできてしまう時代において、手間がかかる作業には逆に経験価値が生まれやすい。たまに土鍋でご飯を炊くと美味しいのと同じだ。

 第三の魅力はノスタルジーである。彼らは昭和に生まれていないが、幼少期に色あせた昭和と出会っている。おばあちゃんの家に黒電話があったり、実家の母の部屋に原田治デザインのゴミ箱があったり、カーステレオに古いCDが入っていて、80年代のヒット曲がかかっていたり。そうした幼時の体験が、自分自身のノスタルジーとして昭和を感じることを可能にしている。

 第四の魅力は自由さである。コンプラ無視の昭和のバラエティを見せると、自由でうらやましいという感想を書く学生が少なくない。ルーズソックスなど90年代コギャルファッションがリバイバルした時、彼女たちが好きな格好をして、好きなように渋谷の街を闊歩していたのが自由でカッコイイと語る女子学生が何人もいた。やさしさとケアにあふれた令和は手放したくないが、一方で力強さと勝手さにあふれた(ように見える)昔にも惹かれる。今と昔のどちらがよいと割り切れない気持ちは、私もよく理解できる。

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