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昭和レトロはどこへ行く――令和の若者にウケるわけ

高野光平(茨城大学教授)

相対レトロと絶対レトロ

 最近のレトロブームのもうひとつの特徴は、1980年代や90年代が射程に入っていることだ。

 私が20代だった90年代、レトロといえば50年代から70年代の文化を指していた。一世を風靡した渋谷系アーティストの元ネタを見ても、それは一目瞭然である。その後の『ALWAYS』を中心とした流行でも主役は昭和30年代で、80年代カルチャーは一部で評価されていたものの、中心にはなかった。しかし現在、若者に支持されるレトロカルチャーには80年代モノが非常に多く含まれており、90年代モノも急激に増えつつある。

 いつの時代でも、若者にとっては自分が生まれる少し前くらいの文化がいちばんレトロの琴線にふれるものだ。90年代生まれにとって、いちばんレトロのツボを刺激するのは80年代だし、ゼロ年代生まれにとってそれは90年代なのである。そうやって、若者文化のレトロのツボは時とともに移ろっていく。

 私はこれを「相対レトロ」と呼んでいる。この観点に基づけば、まもなく平成レトロが若者文化のメインになり、その中心は平成初期から中期、そして後期へと少しずつ動いていくだろう。

 一方で、昭和には時代に流されない固定的・普遍的な魅力もある。とりわけ80年代は、人類史上最後のアナログ時代であり、アナログ文化の最高到達地点である。これは世界共通の価値で、この価値はおそらく永遠に変わることがない。だから(日本でいう)昭和レトロは、いつまでたってもアナログ文化の象徴として、固有の価値を持ち続ける。

 私はこれを「絶対レトロ」と呼んでいる。江戸情緒や大正ロマンと同じようなニュアンスで、とうぶん昭和レトロは存在し続けるのではないかと、私は予想している。

 最近までは、若者文化の中でぐうぜん相対レトロと絶対レトロがどちらも80年代に照準を定めていたので、大きなブームになった。今後は両者がズレていくから、昭和レトロと平成レトロは別々の趣味として深まっていくと考えられる。

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