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予備校文化の盛衰と拡散――市場性を利用した対抗運動とその帰結

藤村達也(奈良女子大学特任助教)
写真提供:photo AC
(『中央公論』2026年4月号より抜粋)

 予備校は生徒の志望校合格を第一の目的とし、大学入試対策に必要な知識や技術を合理的に指導する場であると、一般的には考えられている。他方で、予備校にはそうした目的合理性だけに縛られない固有の文化もまた広がっていた。正規のテキストやカリキュラムを無視して哲学や文学、人生論を語る教養主義的な講師や、学生運動の経験を語り生徒をデモへと動員するかつての全共闘闘士、奇抜なファッションに身を包み卓越した話芸や派手なパフォーマンスで生徒を魅了するタレント的講師など、多種多様な講師を中心にして独自のサブカルチャー、すなわち「予備校文化」が形成されていた。

 狭義の予備校文化とは、主に全共闘世代講師によって展開された文化的運動を指すが、より一般には、入試対策に限定されない予備校の在り方を意味する言葉でもある。このような視点から見れば、全共闘世代以前にもその萌芽は存在しているし、あるいは現代において予備校の外部に「予備校的なもの」の広がりを見出すこともできよう。このような視点から、人口動態や公教育との関係といった構造的基底にも目を向け
つつ、予備校文化の展開を、駆け足ではあるが歴史的に跡づけてみたい。

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