政治・経済
国際
社会
科学
歴史
文化
ライフ
連載
中公新書
新書ラクレ
新書大賞

老兵は死なず、ただ調べるのみ......92歳にして実証史学にこだわる我が生涯

秦 郁彦(現代史家)
写真:stock.adobe.com
(『中央公論』2025年11月号より抜粋)

 最近心にかみしめている言葉があります。日本占領の連合国軍最高司令官だったマッカーサー元帥が朝鮮戦争中に解任され本国に帰って、議会で行った退任演説の一節です。「老兵は死なず、ただ消えゆくのみ(Old soldiers never die, they simply fade away)」というこの名文句は、元帥の創作ではなく、ウエストポイント陸軍士官学校で言い伝えられていたのが起源だそうです。

 今年は「戦後80年」という節目で、首相が特別な見解を出すかが注目されていますね。92歳を迎えた我が身は、断筆した老兵として世の転変を静かに見守りたいと思っています。ついでに、歴史家として気になる姿を二、三言及しましょう。

1  2  3