優しそうだけど、実は冷淡
北京市海淀区。中国屈指の有名大学が点在するエリアに立つ北京外国語大学で出会ったのは同大学院生の陸鳴(仮名、二十三歳)だ。研究テーマは「日本企業のCSR(企業の社会的責任)について」とお堅いが、長澤まさみの大ファンで、インターネットで日本のドラマを見ているという普通の男子だ。陸は日本の印象をこう語る。
「以前は中国を侵略した悪い国というイメージもあった。でも戦後努力して立ち直り、優れた自動車や電気製品を開発した技術立国。アニメやマンガなどクリエイティブな分野にも秀でている。それに日本人は礼儀正しくて真面目、几帳面な性格を持っています」
愛知県の大学に二ヵ月間短期留学したとき、真っ先に感じたのは「道にゴミひとつなく、空気がおいしくて空が青くきれいなこと」だった。日本人の友人もできたが、日本人との間には何となく薄い壁があると感じた。
「日本人はみんなお行儀がよく、会話では『そうですね』とか『はい』という相槌をよく打つのですが、本当に親密な関係になるには時間がかかる。最初は自分だけが距離を置かれているのかと思いましたが、日本人同士も互いに気を遣い合い、表面的な付き合いをしているように見えました」
陸だけでなく、今回の取材で「日本人は一見優しそうに見えるが、心の中は冷淡。外国人(とくに東洋人)を差別し、常にバリアを張っている。真の友人にはなりにくい」という日本人観を何度も耳にした。
ただし、日本全体に対してはよい印象を抱いているようだ。陸にとって印象深かったのは、日本人の先生に引率されて山奥の温泉に行ったときのこと。
「夜にみんなが外で蛍が出るのを待っていたんです。アニメでしか見たことがなかった蛍の幻想的でやわらかい光。日本人はこんなふうに自然を愛でるのかと新鮮に感じて楽しかった」