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「ユーラシア・ダイナミズム」に無関心ではいられない米国

アフガニスタン撤退、ウクライナへの対応──。 杉田弘毅共同通信特別編集委員が「バイデン外交の深層」を読み解く
杉田弘毅(すぎた・ひろき)

米国のユーラシア軍事介入の基準

 バイデンはアフガニスタン撤退に当たって二つの言葉を残した。それは「アフガニスタンには米国の国益はない」と「自分の国は自分で守れ」である。国益がないから撤退するとは、撤退の口実ととらえるべきであろうが、米国人のアフガニスタン、さらにはユーラシア奥部に対する意識の薄さを正直に語ったものだ。

 かつてオバマはシリア攻撃を見送った2013年に、米国が軍事介入をするのは以下の4つの国益のためだと説明した。それは(1)米国や同盟国を侵略から守る、(2)エネルギーの流通を守る、(3)テロリストのネットワークを破壊する、(4)大量破壊兵器の開発を阻止する──と具体的であり、これらを基準に軍事力の行使を決めるというのである。ここで注目すべきは、自由、人権、民主主義など普遍的価値が含まれていないことだ。いわゆる民主主主義政権づくりを目的とした軍事介入はすべきでないという論だ。

 オバマのこの選択的介入論はバイデン政権にも引き継がれている。四基準を基にアフガニスタン撤退の理由を分析してみると、アルカイダやISなどテロ組織はある程度能力を失った。アフガニスタンのタリバンが米国や同盟国を即座に攻撃するとは考えられない。エネルギー資源はアフガニスタンにはない。タリバンが大量破壊兵器を開発する可能性は否定できないが、近い将来はないだろう。となると、軍事介入を続けるだけの国益はアフガニスタンにはないとのバイデンの言葉は納得できる。

 もう一つの「自分の国は自分で守れ」は、アフガニスタンのガーニ前大統領の遁走と国軍のあっけない崩壊に立腹したためのバイデンらしい直截な発言だが、これも米国の本音がでている。オバマの「米国は世界の警察官ではない」、あるいはトランプの「安保ただ乗りは許さない」と通じるもので、米国人の間に根強い外交安保観である。「国益」がないユーラシア大陸奥部では、自分の国を守らないような国民のために、なぜ米国は犠牲を払う必要があるのか、というわけだ。

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