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「極中道」は民主主義の救世主か、破壊者か

吉田 徹(同志社大学教授)
写真提供:photo AC
 極右・極左勢力の台頭に世界が揺れる中、「極中道」というヨーロッパ発の新しい概念が注目を集めている。「過激中道」とも訳され、日本では批判的に紹介されることが多いこの概念は、いかなる文脈で生まれ、なぜ今注目を集め、どれほどの有効性があるのか。政治学者の吉田徹氏が論じる。
(『中央公論』2024年10月号より抜粋)

 ヨーロッパは常に新しいイデオロギーや政治コンセプトを生み出してきた場所だ。コミュニズム(共産主義)やソーシャリズム(社会主義)は言うまでもなく、20世紀に入ってからの新しいイデオロギーといって良いであろう、ファシズムをも生み出した。

 その地では近年、「極中道(きょくちゅうどう)(「エキストリーム・センター」もしくは「ラディカル・センター」)」という聞き慣れない言葉が流通するようになってきた。

 そもそも「中道」という概念自体、政治史や政治学では必ずしも明確な定義付けをされてこなかった。これは、現状の変革や作為を企図するものであるはずの政治イデオロギーとして把握するのが難しいという事情も作用している。

 では「極中道」とは何を意味するのか、その新しさはいかほどのものなのか──少なくともそれに改めて注目が集まっている背景には、現実政治での展開が影響している。

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