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世界最大の「権威主義国」、インドはどこへ向かうのか

湊一樹(アジア経済研究所地域研究センター研究員)
写真:stock.adobe.com
 世界の「トランプ化」と時を同じくして、インドの「モディ化」が進んでいる。2014年にナレンドラ・モディが首相に就任して以降の、この国の実像を問題を論じる――。(『中央公論』2025年6月号より抜粋)

友好ムードの米印首脳会談

 外交上の体裁をすべてぶち壊してしまったトランプ・ゼレンスキー会談とは対照的に、その約2週間前に行われた、トランプ大統領とインドのナレンドラ・モディ首相による首脳会談は、友好的な雰囲気に包まれているようにみえた。たとえば、モディ首相は共同記者会見で、「アメリカを再び偉大に」の略称「MAGA(マガ)」に引っかけて、「インドを再び偉大に」を意味する「MIGA(ミガ)」という言葉をわざわざ使い、この二つが一緒になれば、「繁栄のための強大な(メガ)パートナーシップになる」と述べている。

 これに呼応するように、トランプ大統領は「インドとの関係もモディ首相との関係も、かつてないほど良好だ」と断言し、共同記者会見を締めくくった。会談全体を通しても、「両首脳の間には個人的な信頼関係が築かれ、それが良好な両国関係の基礎をなしている」という点がたびたび強調された。

 確かに、二人の指導者は多くの点で政治姿勢や価値観を共有している。しかしそれは、首脳会談の共同声明や記者会見で表立って触れられる共通点でもなければ、両国関係を真に前進させるような共通点でもない。

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