受動的知的生活オンリーのB氏のある日
毎朝五時半には目が覚めてしまう。さーって今日は何をしようかな。六五歳で嘱しょく託たくを辞めてから五年が経過。あまり趣味がない私は毎日ヒマをつぶすのに困る。
まずは担当の洗濯。干し方について、また妻から注意を受けてしまった。やれやれ。気を取り直して、録りためたテレビ番組を見よう。二時間半ずっと見ていたら、妻が「ちょっとどいてよ」と掃除機をかけ始めた。
かかりつけの病院でも行っていつもの薬をもらうか。待合室はお年寄りばかり。うーん、こんなに混んでいるとは......。一時間半も待った。新聞でも持ってくればよかった。
昼食は妻と向き合いながら。妻は友だちとの予定をスマホで確認するのに忙しく、会話らしい会話がない。午後、妻はお茶会にでかけてしまった。暇だから近くの公園へ。持参した新聞を隅々まで読む。まあ情報収集はできた。
夕方に帰宅し、司馬遼太郎の歴史小説を読む。坂本龍馬については、このような見方もあったのかと納得。さて夕食だ! テレビを観ながら、第三のビール(新ジャンル)をグラスに入れる。最後の一滴まで注ごうとして音をカンカン鳴らす。妻の視線がちょっとコワイ。結婚四〇年で子どもたちも独立したが、亭主元気で留守がいいと感じているのだろうか......。
あまり変わり映えしない一日。でも、まずまず満足だ。明日は何をしようか。どうやって時間をつぶしたら、妻のご機嫌を損ねないで済むのかなあ。図書館にでも行ってみるか......。
*A博士、Bさんは取材に基づいたフィクションです。実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。