定年後に本当にコワイのは「知的格差」だ!

知的エンジョイ派A博士と受動的Bさんの一日
櫻田大造(関西学院大学教授)

 人生一〇〇年時代の勉強法

 さて、対照的な七〇歳のA博士とB氏の生活ぶりを、読者諸氏はどう感じただろうか? 人生一〇〇年をどのようにして知的に生きるか? A博士のように能動的知的生活を送れば、パートナーとの関係円満、少しお金も稼げる、好きなビールもちょっとゼイタクな種類になる、などなど、ウィンウィンの結果に! 定年の前でも後でも、勉強を再開すると、まさにボーッと生きなくて済んで、認知症予防にもなりうるのである。

 ベストセラーかつロングセラーとなった渡部昇一『知的生活の方法』(講談社現代新書、一九七六年)にならえば、A博士のような「能動的知的生活」を送るほうが、B氏のような「受動的知的生活」よりも、定年前後を愉しむ可能性がぐんと広がる。

 受動的知的生活とは、本やウェブなどで情報を集め、それを話題として取り上げること。能動的知的生活とはそれにとどまらず、それらの発見を記事、論文・ブログ・本などにまとめたり、受講生相手に教えたりすることである。筆者は渡部昇一氏の意見すべてに賛同するわけではないものの、今なお有用な部分を評価している。それに加えて、ウェブ時代の二一世紀型知的生活の方法をめざすべきである。

 年齢や体力も人生における勉強には関係ない。たとえばガン・サバイバーにもかかわらず、七七歳で博士になられた、シニアの「スーパー能動的知的生活者」もおられる! 大学(院)などの資源を活用して、学士、修士、博士をめざすこともできよう。あなたも、A博士のようにパートナーや友人との関係も良好になり、自己啓発を愉しみ、明日が来るのが待ち遠しいライフスタイルを身につけることができるのだ。

「定年後知的格差」時代の勉強法

櫻田大造

定年後に本当にコワいのは経済格差より「知的格差」。情報を集めるだけの「受動的知的生活」から、論文、ブログを書いたり講師を務めたりする「能動的知的生活」へ転換すれば、自己承認欲も他者承認欲も満たされ、病気の予防にもなる! その方策として本書は、①大学(院)の徹底活用術、②研究法、論文執筆術、③オンライン、SNS活用術等を伝授。キャリアを活かすもよし新分野に挑むもよし。講師業や博士号さえ夢じゃない実践マニュアル。

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櫻田大造(関西学院大学教授)
関西学院大学国際学部教授。1961年長野県生まれ。シアトル大学教養学部政治学科および上智大学外国語学部英語学科卒。トロント大学大学院政治学修士課程修了(MA)。博士(国際公共政策、大阪大学)。信越放送(SBC)ラジオの国際問題コメンテーターも兼務。専門は国際関係論、比較外交政策。著書に『誰も知らなかった賢い国カナダ』(講談社)、『カナダ・アメリカ関係史』(明石書店)、『「優」をあげたくなる答案・レポートの作成術』(講談社文庫)、『大学教員 採用・人事のカラクリ』『大学入試 担当教員のぶっちゃけ話』(ともに中公新書ラクレ)、『比較外交政策』(共編著、明石書店)など。

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